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この出会いは…
第9章 彼の家族
一ノ瀬さんの手が頭から耳に、そして頬までやってきて、何度か身体が震える。
そのままクイッと顎を持って顔を上に向かされて、一ノ瀬さんと目が合った。

「やっ…ダ、メッ…」

それ以上声も出せない。
至近距離にある一ノ瀬さんの顔から目が反らせなくなって、頭が沸騰したように熱くなる。
パニックで視界が滲むし、グルグルして、意識が飛びそうだ。

「っはぁ…ヤバい。ごめん…」

そう呟くと同時にいきなり抱き締められた。
えっ!えっ?
ヤバい?ごめん…?
私は何にも言葉を返せずに一ノ瀬さんの腕の中に収まっていて。
もちろん身体は固まっていて。
一ノ瀬さんは私の耳元でため息や深呼吸を繰り返している。

「くっ、苦しいんですか?どこか、痛…い…?」

言い終わらないうちに強く抱き締められた。

「いや…身体が反応した、というか……ごめん。」

身体が反応…?
……っあッ!!
つまり…そっ、そういうことっ!?
気が付けば、耳に響いてくる息遣いや、耳をくすぐるため息は深くて甘い。

「はぁ…ごめん。ちょっと…」

私を包む腕を緩めて、一ノ瀬さんが起き上がった。
ベッドサイドに移動して、ため息や深呼吸をする背中が見える。
しばらくそうしていて、最後に大きく息を吐くと、私に向き直って呟いた。

「……ごめん。」

気まずそうに顔を反らしながら謝られてしまった。
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