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この出会いは…
第10章 乗り越えたいモノ
「あの、バレンタインの…」

箱の蓋を開けて一ノ瀬さんに差し出したけれど、まだ一ノ瀬さんは驚いた顔のまま。
中にはカップに入れたティラミスが4つ。
…あれ?
私、なんか間違えたかな?
やっぱりタイミングが今じゃなかった?

「えっと…やっ、やっぱりこんな…時間に食べるのは、いや…です、よ、ね?」

一応、かわいく包装してきた箱の蓋を閉じて、冷蔵庫に戻そうとしたら、手を掴んで止められた。

「…いつの間に作ったの?」

驚いた顔はそのままで、そう聞かれた。

「今日の朝に作って…、一ノ瀬さんのお家にお邪魔してすぐに、冷蔵庫にしまわせてもらってました。」

すっかり自信をなくした私は、小さな声で答えて、一ノ瀬さんの顔色を伺った。
迷惑だったのかな…
そう思って顔を伏せた時、一ノ瀬さんに頭を撫でられた。

「ありがとう。嬉しくてすぐに言葉が出なかった。」

その言葉に安心して、顔を上げた。
一ノ瀬さんと目が合って、微笑んでくれた。

「これ、ティラミス?」

「はいっ。エスプレッソとマスカルポーネを効かせたので、甘いのが苦手でも大丈夫かな、と…」

「うん。美味しそう。」

コーヒーとティラミスとスプーンをダイニングテーブルに運んで、こんな時間からティータイム。
一ノ瀬さんがティラミスを口に運ぶのを見守って、祈るような気持ちになっている。

「あ、うまい…」

呟くように言われたその言葉に、めちゃくちゃホッとした。
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