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この出会いは…
第10章 乗り越えたいモノ
ゆっくりとナカに入ってくる指。
同時に、どうしても"あの時"の事が脳裏をかすめて肩に力が入る。

「大丈夫。痛い事はしない。もし、痛かったら言って?それ以上は絶対にしない。」

頭を撫でながら、優しく微笑んで、私に拒否権を与えてくれる。
一ノ瀬さんが大丈夫と言っているのなら大丈夫。
一ノ瀬さんを信じる。
頷いてみたけれど、次に来る刺激に身体が身構えてしまう。

「力、抜いてて。ゆっくりするから。」

もう一度頷いて、深呼吸をする。
私の呼吸とタイミングを合わせて、少しずつ指がナカに入ってくる。
あれ…?
痛く、ない…?

"あの時"からソレは恐怖でしかなくて、二度とするもんかと頑なに決めていた。
何度されても痛くて、身体が強ばって、目を瞑って堪えているだけの感覚だった。
この異物感が大嫌いだった。

だから、『欲情してる』と言われた時は衝撃だった。
自分の身体が誰かを欲するなんて…
でも、今も痛くないどころか、自分自身が一ノ瀬さんの指を受け入れて、奥へ奥へと進んで来る度に、なぜかぞくぞくする。

「ん…」

うそ…全部入った、の?
中指を難なく受け入れた今の状況が信じられなくて、少しパニックになった。

「…狭いな。痛くない?」

コクコク頷くと、また優しく微笑む。

「じゃ、動かすよ?」

パニックだし、恥ずかしいしで、目を閉じて頷く。
ゆっくりと動き始めた一ノ瀬さんの指。
ゆっくりだけど、縦横無尽に動いて、ナカをじっくり探られている。
左腕はしっかり私の肩に回されていて、抱き締められているようで安心した。
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