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この出会いは…
第10章 乗り越えたいモノ
うぅ…
身体が重い…
身体や手足、頭でさえも上げられない。
ものすごい倦怠感に襲われている。
唯一動かせた瞼を開けて、瞳だけを動かして周りを見るけれど、部屋の中は薄暗くてよく分からない。
しかし、背中から伝わる熱に包まれていて、安心を覚える。

「うぅ…ん…」

絞り出した声に背中に接している何かがピクッと動いた。
えっ…?あれ?
気が付けば頭を撫でられている?

「んっ…」

気だるい身体に力を入れて、身体を包むモノをぎゅっと掴む。

「知花ちゃん…?起きた?」

「……っ!えぇっ――えっ?」

後ろから聞こえてきた声に振り向いて、その時に自分が裸だという事が分かって、瞬時に状況を把握した。

「身体、平気?」

「えっ、あ、はいっ。あの…私…」

"私…"に続く謝罪の言葉が恥ずかしさのあまり、出てこなかった。
身体にかけられていた毛布を、頭まで引っ張って顔を隠して、なんとか『ごめんなさい』と絞り出した。

「いや、俺こそごめん。」

え…、どうして一ノ瀬さんが謝るの?
毛布の中から一ノ瀬さんの顔を見上げると、一ノ瀬さんも私を覗き込んでいて、見つめあう形になった。

「初めて…だったんだよね?…イくの。」

「…っ!あの…えっ、と。………はぃ。」

はっ、恥ずかしくて堪えられなくて、俯いた。
俯いた私の顔に手を滑らせて、輪郭をなぞられる。

「怖かった?…もっと、ゆっくり、優しくするべきだった。」

「じゅ、十分…いっ、ち…ノ瀬さんは、優しかった、ですよ?」
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