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この出会いは…
第12章 誕生日
「あーあ、一ノ瀬さん可哀想。」

「教えてもらえないのも、辛いと思うよ?」

そっ、そうなの?
黙っているのは、ダメ…なの?

「もう3月だし、仕事は忙しいのは分かるけどね。慌ててプレゼント買いに行かせる気?いっそがしい一ノ瀬さんに?」

「どうしよう…」

「「だから、伝えなさいって!!」」

二人の説得から逃げるように、先に社食を後にした。
はぁ――…
言わないよりは言った方がいいのか。
いや、でも、何て切り出すの?
やっぱり…聞かれない限り、無理じゃない?
一ノ瀬さんも知らされずに過ぎたら悲しいのかな…
ダメだ、考えがまとまらない。
今考えても仕方がない。
今は仕事に集中しなくては。

私は午後から先輩に付いて外出予定だったから、早めにお昼休憩を取らせてもらっていた。
急いで身支度を整えて、バッグとコートを持ってデスクに戻った。
広報活動の経費を削減しろと言う上層部のお達しにより、今年度まで使用させていただいていたあらゆる会場の見直しをする。
今日は使用料の交渉や新規開拓のリストアップ先を回っての交渉を行う。

これが結構ハードで、予めローヒールのパンプスにしてきてはいても、足はパンパンになった。
先輩に付いてきた私には初めての事ばかりで、メモをとる事が多くて手も疲れた。

会社に戻って来たときはホントに疲労困憊で、一ノ瀬さんの事を思い出す余裕もなくなっていた。
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