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この出会いは…
第12章 誕生日
笑いながら左手を伸ばして、私の頭をくしゃくしゃにした。

「うぅ…。せっかく頑張って巻いたのに…」

「今日の為に?」

え、あっ…。
聞こえないくらいの声で呟いたのに、拾われてしまった。
一ノ瀬さんと目が合って、慌てて俯く。

「……そうです。」

恥ずかしくて、さらに小さな声で呟いた。

「はは、ありがと。嬉しい。」

「いえ…どういたしまして?」

「あっはっはっ。さすが知花ちゃん。」

思いっきり笑われて、車を運転する一ノ瀬さんの横顔を睨む。
そんなことをしているうちに車が料金所のゲートを通った。

「高速…?」

「うん。行き先分かった?」

分岐の看板に出ている地名を見てみる。
うーん…、静岡方面?
西に向かっているのは分かったけれど…

「…分かりません。」

私の返事に、一ノ瀬さんがまた楽しそうに笑う。

「静岡方面…熱海?富士山?伊豆、ですか?」

「んー、そこまでは行かない。でも、温泉地。」

うーん、って事は…
案内標識や車のナビに表示されているインター名をヒントに考える。

「温泉地…あっ!はっ、箱根…ですか?」

「あぁーあ、バレちゃった。」

「ホントに?やった!当たったっ!」

行き先が分かって、思わずはしゃいでしまって、その様子をまた笑われた。
また子どもっぽいと思われたかな。
でも、男の人と一緒にいて、自分がこんなに自然体でいられるのが信じられない。
未だに、不思議だなって客観的に驚いてしまう自分がいる。
一ノ瀬さんの前では、私はきっと変われている。
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