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この出会いは…
第12章 誕生日
「はぁ~、あったかいね。」

身体を洗い終えた一ノ瀬さんが私の隣に入って来て、ため息混じりに呟いた。
そうです。
今、私は一ノ瀬さんと内風呂に入っています。

遡ること十数分前。
固まる私の目の前で、さっさと自分の着替えを用意した一ノ瀬さんに『さ、入ろ?』と微笑まれた。
尚も微動だにせず突っ立っていると『俺が着替えを出してもいいの?』とニヤリとされた。
慌てて下着をキャリーから取り出して、キレイに畳まれている浴衣の中に挟んで隠して、脱衣所に二人で入ったところで、堪えきれずに懇願した。

『先に入って身体を洗ったら呼びますので、待っててくれませんか?』

一ノ瀬さんはそんな私の言葉も想定内だった様子で、笑って了承してくれた。
部屋の襖をきっちり閉めたのを確認して、そこから、急いで身体を洗って、室内の方のお風呂に浸かって、一ノ瀬さんに声をかけて今に至る。

すぐ隣に座っているから、気が気じゃない。
箱根湯本の温泉って無色透明なんだもん。
体育座りで下半身を、両腕で胸を隠して、自分の心臓の音に焦る。
のぼせる。
これは絶対、すぐにのぼせる。

「まだ、恥ずかしい?」

「……はい。」

「客室風呂がないとさ、温泉に来たって別行動じゃん?なんか寂しいなと思ってこの部屋にしたんだけど、イヤだった?」

一ノ瀬さんが浴槽の縁に片肘をついて、私の方に身体を向けた。
まともに顔を見れなくて正面を向けないし、一ノ瀬さんの身体が視界に入って俯くことも出来ない。
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