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第2章 いい兆し

「でもさ、佐々木のもらい事故ってのを聞いて、話し声がする方を振り返って確認したらさ、一ノ瀬がすっごい剣幕で走り出してたんだもん。」

え？一ノ瀬さんが？
顔を上げて一ノ瀬さんを見る。

「一ノ瀬がキレるかとハラハラしたわ〜」

「めったにキレないヤツがキレると厄介だからね。」

「貴重なシーンだったな。」

滝本さんと星さんにからかうように暴露されて、心なしか一ノ瀬さんの顔が赤い。

「分かったから、もうやめろ。その話は。」

一ノ瀬さんはぶっきらぼうに言い捨てて、ビールを飲み干した。

「でも、皆さんが来てくださってホント良かったです。正直、しつこかったので…」

「美怜ちゃんもキレかかってたもんね〜」

あ、星さんにバレていた。
美怜、頑張れ、挽回するんだ！
星さんと美怜のやり取りも面白くなってきて、私もずっと笑っていた。

「知花ちゃんたちってホントに仲がいいんだね。」

目の前から降ってきた言葉に顔を上げた。

「さっきから、二人のことを見てる知花ちゃん、嬉しそうだったから。」

み、見られていた！
急に恥ずかしくなるが、『いい関係なんだね』と微笑まれて、嬉しくもなった。

「私は、…一ノ瀬さんたち三人の、かっ関係も素敵だと思います。」

一ノ瀬さんはフフッと柔らかく微笑んで『ありがとう』と言った。
その後も、みんなの会話が面白くて、時間はあっという間に過ぎてしまった。
明日も仕事だからと今回も22時前解散だ。

「あ、俺、一度会社戻るわ。」