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この出会いは…
第12章 誕生日
「寒っ…」

少し肩をすくめて、自分で自分を抱き締めるように腕を回して縮こまる。
あれこれテンパって身体が火照っていたけれど、3月中旬の夜風はやっぱり冷たかった。

チラッと室内に目をやると、二つの敷き布団がピッタリとくっついて敷かれていて、また体温が上がってしまう。
今までだって一緒のベットで寝た事があるのに。
自分のテンパり具合に呆れてしまう。

「はぁ…、考えないようにしよう…」

目の前の露天風呂に手を入れてみると、冷たい指先がじーんとした。
少しだけ浸かりたい衝動に駆られて、浴衣の裾を捲り上げて、露天風呂の濡れていない縁の部分に腰を下ろした。

「あったかい…」

冷たい夜風に当たりながら、足湯をしている状態。
見上げれば空にはいくつか星が見える。
贅沢だな…
私、こんなにしてもらっていいんだろうか。
一ノ瀬さんが見返りを求めてくる人ではないことは分かっている。
でも、それでも、私は何をしてあげられるだろう。
何が出来るだろう。
こういう時に何も思い付かなくて、何も出来ない自分がホントにイヤだ。

「……こ、わい…」

怖くなってきた。
私、このままで大丈夫かな…
いつか、飽きられてしまわない…?
こんな幸せを知ってしまって、もう一ノ瀬さんがいないと笑っていられない。
大切な人が出来る事って、こんなに…

怖い━━━━━

再び自分自身を抱き締めるように腕を回して、軽く身震いをした。

「…何が怖いの?」

背後から掛けられた言葉に身体が固まった。
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