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この出会いは…
第2章 いい兆し
駅について改札を抜けて、ホームに辿り着いた。
実をいうと、あの日から、やっぱり電車が少し苦手になっていた。
今日もなかなか人が多い。
一つ深いため息をつき、自分を落ち着かせ、ホームに停まった電車に乗り込んだ。
私は一ノ瀬さんと美怜に挟まれて立ち、電車は動き出した。
大丈夫、今日は美怜も一ノ瀬さんもいる。
絶対に取り乱したりしない。
しかし、良かったのは次の駅までだった。
電車が駅に着いて、人が出入りして、ドアが閉まった時には、美怜は隣にいなかった。
「み、みれ…い?」
辺りを見回すと美怜は随分離れたところにいた。
同時に、一ノ瀬さんを含め、自分の周りが男の人ばかりだという事に気が付いた。
気が付いてしまえば、息が詰まって来てしまう。
心臓の音が早い。
知らず知らずのうちに呼吸も早くなる。
「こっち。」
一ノ瀬さんに腕を引っ張られて、電車のドアと座席までの僅かなスペースに移動させられた。
私が電車の壁に背を向けて立ち、目の前に一ノ瀬さんが立って、私の視界を遮った。
「一度、降りようか?」
顔を上げると、一ノ瀬さんが心配そうに、でも、優しく微笑んでいた。
あぁ、私はこの優しい笑顔に何度救われるのだろう。
もう、これ以上迷惑は掛けられない。
首を横に振って、大丈夫だと伝えた。
深呼吸を繰り返して、思い出しそうになる恐い記憶を抑え込み、ガタンガタンという電車の揺れに、足を踏ん張るだけで精一杯だった。
だから次の瞬間、ガタンと今までより大きく電車が揺れた事に、瞬時に反応出来なかった。
手すりを求めた私の右手は、手すりを空振りし、そのまま目の前の一ノ瀬さんのスーツを握り、身体は一ノ瀬さんの胸元に収まってしまった。
実をいうと、あの日から、やっぱり電車が少し苦手になっていた。
今日もなかなか人が多い。
一つ深いため息をつき、自分を落ち着かせ、ホームに停まった電車に乗り込んだ。
私は一ノ瀬さんと美怜に挟まれて立ち、電車は動き出した。
大丈夫、今日は美怜も一ノ瀬さんもいる。
絶対に取り乱したりしない。
しかし、良かったのは次の駅までだった。
電車が駅に着いて、人が出入りして、ドアが閉まった時には、美怜は隣にいなかった。
「み、みれ…い?」
辺りを見回すと美怜は随分離れたところにいた。
同時に、一ノ瀬さんを含め、自分の周りが男の人ばかりだという事に気が付いた。
気が付いてしまえば、息が詰まって来てしまう。
心臓の音が早い。
知らず知らずのうちに呼吸も早くなる。
「こっち。」
一ノ瀬さんに腕を引っ張られて、電車のドアと座席までの僅かなスペースに移動させられた。
私が電車の壁に背を向けて立ち、目の前に一ノ瀬さんが立って、私の視界を遮った。
「一度、降りようか?」
顔を上げると、一ノ瀬さんが心配そうに、でも、優しく微笑んでいた。
あぁ、私はこの優しい笑顔に何度救われるのだろう。
もう、これ以上迷惑は掛けられない。
首を横に振って、大丈夫だと伝えた。
深呼吸を繰り返して、思い出しそうになる恐い記憶を抑え込み、ガタンガタンという電車の揺れに、足を踏ん張るだけで精一杯だった。
だから次の瞬間、ガタンと今までより大きく電車が揺れた事に、瞬時に反応出来なかった。
手すりを求めた私の右手は、手すりを空振りし、そのまま目の前の一ノ瀬さんのスーツを握り、身体は一ノ瀬さんの胸元に収まってしまった。