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この出会いは…
第2章 いい兆し
なっ、なんということだ!
自分がしでかした事態に固まってしまう。
とっさに手を離すことも、身体を離すことも、謝ることも出来なかった。
スーツを握りしめたまま、胸元に収まったまま、私はパニックに陥った。
「大丈夫だった?このままでもいいから、立っていられる?」
なんとか首だけをコクコクと動かして頷いて見せる。
「あ、恐い?」
今度は首を横に振る。
『良かった』と頭上から言葉が降ってきた。
そう言えば、思ったより怖くない。
知らない人じゃないからかな。
この状況下で一ノ瀬さんは救世主だからなのか。
だんだんと冷静さを取り戻してきたら、今度はどのタイミングで身体を離せばいいのか、という事が頭の中を占めて、パニックに陥った。
そんな事を考えている間に、二駅ほどをやり過ごし、美怜も隣まで戻って来れていた。
「知花?平気?…あらっ。」
完全に一ノ瀬さんに寄りかかっている私を見て、小さく驚いた声を上げた。
そこで改めて恥ずかしさが込み上げてきて、手を離して、身体を引いた。
「あの…すみませんでした。」
私の言葉にフフッと笑う。
「また謝った。何回目、この会話。」
何度か聞いた言葉が返ってきた。
「あ、そうですね。えっと…」
えっと、こういう場合は…
「あの、ありがとうございました。」
「うん。」
私と一ノ瀬さんのこのやり取りを、美怜が嬉しそうに眺めていたのを、私は全く気付かなかった。
「一ノ瀬さん、知花の事ありがとうございました。」
美怜の声はやけに弾んでいた。
自分がしでかした事態に固まってしまう。
とっさに手を離すことも、身体を離すことも、謝ることも出来なかった。
スーツを握りしめたまま、胸元に収まったまま、私はパニックに陥った。
「大丈夫だった?このままでもいいから、立っていられる?」
なんとか首だけをコクコクと動かして頷いて見せる。
「あ、恐い?」
今度は首を横に振る。
『良かった』と頭上から言葉が降ってきた。
そう言えば、思ったより怖くない。
知らない人じゃないからかな。
この状況下で一ノ瀬さんは救世主だからなのか。
だんだんと冷静さを取り戻してきたら、今度はどのタイミングで身体を離せばいいのか、という事が頭の中を占めて、パニックに陥った。
そんな事を考えている間に、二駅ほどをやり過ごし、美怜も隣まで戻って来れていた。
「知花?平気?…あらっ。」
完全に一ノ瀬さんに寄りかかっている私を見て、小さく驚いた声を上げた。
そこで改めて恥ずかしさが込み上げてきて、手を離して、身体を引いた。
「あの…すみませんでした。」
私の言葉にフフッと笑う。
「また謝った。何回目、この会話。」
何度か聞いた言葉が返ってきた。
「あ、そうですね。えっと…」
えっと、こういう場合は…
「あの、ありがとうございました。」
「うん。」
私と一ノ瀬さんのこのやり取りを、美怜が嬉しそうに眺めていたのを、私は全く気付かなかった。
「一ノ瀬さん、知花の事ありがとうございました。」
美怜の声はやけに弾んでいた。