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この出会いは…
第3章 私の過去
それから、少し美怜ちゃんと電話で話して、タクシー乗り場へと歩いた。
タクシー乗り場に着いても、知花ちゃんは俯いて黙ったままだ。

「気分が悪くなったり、苦しくなったりしたら、すぐに教えて?」

「……はい。」

頷きながら、小さく絞り出すような声で答えた。
タクシーの順番が来て、乗り込む。
運転手に行き先を告げ、動き出すと、知花ちゃんが口を開いた。

「……すみません、でした。」

辛うじて聞き取れるような、弱々しい声だった。
知花ちゃんを見ると、下唇を噛んで、両手を膝の上で握り締めている。

「いっ、いつもいつも…わた、し…迷惑かけて、ばっ、かり…で…。」

「迷惑だと思ってたら、今日だって声なんかかけてないよ。」

「でも…、私…」

相変わらず、唇と両手はそのままだ。
あぁ、泣くのを堪えているんだろうな。
泣いたらさらに辛くなるのかな。
泣いて楽になるのなら泣いても構わないのに。

「今日も…驚いたけど、面倒なら琴莉ちゃんとの電話の前に帰ってるよ。」

尚も握り締めている両手が痛々しい。
その右手にそっと触れてみた。
案の定、少しビクッとする。

「手、痛いでしょ。ほら、爪が。…口も。」

俺の言葉に顔をあげて、恐る恐る視線を合わせてきた。
やっと、目が合った。
顔色が先程よりは良くなっていて、安心した。

「迷惑なんて思ってないよ。だから、そんなに自分を責めないで。」

目線を合わせながら笑い掛けるが、知花ちゃんに変化はない。
下唇を噛み締めたまま、また俯いてしまった。

「そっ、んなに、やさし、く…しな、いで、くっ…ください。」

沈黙を破った知花ちゃんの言葉に、衝撃を受けた。
すぐに、言葉が出てこなかった。
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