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第3章 私の過去

「ごめっ…なさ、い。」

「ち、知花ちゃん？」

まだ、頭が覚醒しなくて、何と答えたらいいのか分からない。
タクシーの運転手の到着を知らせる声で我に返った。

「とりあえず、降りよう？」

支払いをしてタクシーを降りると、美怜ちゃんがアパートから出てきた。

「知花！一ノ瀬さん！」

知花ちゃんは、美怜ちゃんの声に顔を上げ、美怜ちゃんの姿を確認すると、また涙を溢れさせた。

「知花！大丈夫？今日はうちにおいで。」

美怜ちゃんは、泣いている知花ちゃんを抱き締めて、顔を確認しながら、微笑むように話していた。

「一ノ瀬さん、ありがとうございました。…あの、まだお時間よろしければ、少しお話しできますか？」

「え？あぁ、うん。大丈夫だけど…」

突然の申し出に驚いたけど、知花ちゃんに関する話だろうと察し、頷いた。

「あの…知花も休ませたいですし、私の家でも構いませんか？」

「あぁ、美怜ちゃんさえ良ければ。」

二人の後に続いて、美怜ちゃんの家に上がった。
知花ちゃんは、俺に一礼した後、美怜ちゃんに促されて、風呂場に向かった。

「一ノ瀬さん、突然すみません。狭いですが、こちらどうぞ。」

美怜ちゃんが飲み物を持って来てくれて、二人でテーブルについた。

「今日はありがとうございました。知花の事…驚きましたよね？」

「いや、うん。…そうだな、驚いた、かな。」

「驚いて当然だと思います。ただ、知花には…よくある事、…なんです。」

そう言って、美怜ちゃんは黙り込んだ。
話す口調も慎重に言葉を選んでいるようで、静かにゆっくりと話す話し方は、いつもの美怜ちゃんとは違っていた。