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第3章 私の過去

「知花から許可を貰ってないので、事細かくお話しすることは出来ないのですが…」

「うん。俺は…今ここで、美怜ちゃんに聞かなくても、知花ちゃんが話したくなってからでも、構わないよ？」

俺の言葉に美怜ちゃんは少し笑ってお礼を言ったが、またすぐに真剣な顔をして首を横に振った。

「…いや、それにしては、一ノ瀬さんには助けて頂いてばかりなので。私としても、知っておいて頂きたいというか…ダメでしょうか？」

美怜ちゃんのすがるような目を見てしまっては、ダメとは言えない。
俺は了承して、緊張から喉が鳴った。
美怜ちゃんは一つ息を吐いて、話し出した。

「知花が…男の人が苦手なのは、おそらく、もうご存知ですよね？」

頷いた俺を見て続ける。

「男の人を恐いと思ってしまうようになったのは、知花の…かっ、過去に原因がある、から…です。」

やっぱりなとは思ったが、そうは告げずに、次の言葉を待った。

「過去に…大学時代に…つっ、付き合っていた当時の彼氏が、…原因、です。」

「過去の…男？」

「はい。その男が…知花に…ぼっ、暴力と、いうか…その…」

暴力…。
男が苦手な理由を、家庭環境とか、幼少期のイジメとかかなと勝手に考えていた俺は、暴力と聞いて固まった。

「大学に入ってすぐの事でしたが、とにかく、それ以来…知花は男の人と恋愛はおろか、…話す事も避けるようになりました。」

「……暴力か…」

美怜ちゃんは苦々しそうに顔を歪めて話していた。
お互いが口をつぐみ、沈黙が流れる。
静かな部屋にシャワーの音が聞こえてくる。

「……おそらく。知花にとっては、知られたくない事でしょうから、知花から一ノ瀬さんに打ち明ける可能性は低かったと思うので…」