パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第3章 私の過去

「過去を忘れようと押し込めるのでは限界があるんでしょうね…辛いけど、乗り越えないと…」

呟くように言ったその言葉が、胸に刺さった。

「知花ちゃん自身が乗り越えられる様に、俺も出来ることがあればするよ。」

「一ノ瀬さん…」

「知花ちゃんは全く悪くないんだから、このままじゃ悔しいよな。」

「一ノ瀬さん！ありがとうございます！」

美怜ちゃんが勢いよく頭を下げて、お礼をいってくれた。

「ホントに救世主です！」

救世主…？
そういえば、電話でそんなこと言っていたな。
『どういう意味？』と笑って聞こうとしたら、タクシーがアパートの前に止まった。
美怜ちゃんにもう一度お礼を言われて、差し出されたタクシー代を断って、タクシーに乗った。

家に着いて、ソファーに座ると、フッと肩の力が抜けた気がした。
頭の中に残るのは美怜ちゃんの言葉だ。

"知花が受けていたのは、主に性的暴力です"

タクシーの中からずっと、頭の中を占領している。
さすがに、タクシーの中では何もしなかったが、今は沸々と込み上げる怒りを何処かにぶつけないと頭がおかしくなりそうだ。
ネクタイを引き抜いて床に投げつけても、全く効果がない。

"知花が泣いて訴えても…無理矢理…"

ホームで蹲って『やだ』と『やめて』を繰り返して取り乱していた知花ちゃんを思い出した。
その日は、顔も知らない過去の男に対する行き場のない怒りを、処理出来ないまま、朝を迎えてしまった。

祐side 終わり