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自己負担。
第8章 波乱の幕開け
「葉月…俺っ…!!」
「…何しに…来たんですか」
ドクンドクンと心臓がうるさく高鳴っている。
なんで。
どうして。
忘れようって必死に目を背けてきたのに。
やっと先輩のいない生活で日常を取り戻してきたのに。
「葉月…会いたかった…」
先輩はそういうと一気にわたしとの距離を詰めてきて、
ここが家の前だということすら忘れて、キツくわたしを抱きしめる。
拒めない。
わたしだって、この腕を離したくはなかった。
身勝手な先輩の行動にわたしはただ無言でうつむく。
「葉月、許してくれ…」
先輩は辛そうに顔を歪めて必死に訴えてくる。
心が千切れそうになりながら、
がんばってがんばって
ようやく先輩から離れたのに。
どうして現れるの?
あと少しで忘れられるかもって思ったのに。
胸の奥に押し込んでいた思いが一気に押し寄せる。
「俺、夢乃と別れる。」
「なん…で…」
「葉月のいない生活がこんなにも辛いなんて思わなかったんだよ…
葉月を苦しめておいて勝手だってわかってる。
それでも俺はお前を失うわけにはいかない。
夢乃と別れるから…戻ってきてほしい」
先輩の言葉に、溢れてきた涙が頬を伝って落ちていく。
もう少しわたしが強かったら。
サイテーとか言ってビンタでもして適当にあしらうことができたのかもしれない。
でもこんな状態のわたしがそんなことできるはずはなかった。
胸が痛い。苦しい。
夢乃先輩ごめんなさい。
心の中で必死に謝りながら、
わたしは先輩の唇を受け入れた。
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