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LOVE SCENE
第1章 春はそこまで
「彼氏に土下座させて泣きわめくような恋人、やめた方がいいんじゃない?」
凍りついた空気の中で、妹はそれを無視して言ったんだ。
「柏木さん、あたしと付き合おう! 大切にするよ?」
張りつめていた空気が、ふっと緩んだ瞬間で、俺は一生妹に頭が上がんないかもしれない。
緊張でガチガチだった春海さんの顔が綻んだ。
「ありがとう。でも俺、この泣き虫が好きなんだ」
「ちぇー。柏木さん、イケメンで好みなのに! 今やってる医療ドラマの俳優さんに似てるもん。ね、お母さん?」
固まっていた母がハッとしたように我に返り
「あ! 言われてみれば似てるわね! 柏木さん、言われるでしょう?」
そこから「まぁまぁ、楽になさって…」みたいな雰囲気にシフトチェンジされたんだよね。
あの時の俺は本当に、なにも出来ないダメなやつだってのを実感したし反省したんだ。
もっと強くならなきゃいけないし、賢くもならなきゃいけない。
父親は俺たちが帰るまでむっつりとしていたけれど、妹は春海さんに質問攻撃をしたり、母はいま熱中しているパッチワークの世界についてとうとうと語ったりして。
なんだかカオスなまま俺たちのカミングアウトは終了した。