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戦国ラブドール
第5章 壊れたドール
 
 外は既に真っ暗で、女を引き入れるにはちょうどいい頃合いである。吉継が何を危惧しているのか悟ると、大海の頬に朱が走った。

「佐吉、せっかくだから彼女を部屋まで送ってあげて。ついでに、その後行長を呼んできてくれないかな」

 吉継が手を離せば、佐吉は吉継の胸倉を掴んで睨みつける。

「お前、さっきから勝手な事ばかり……いい加減にしないと、怒るぞ!」

「もう怒ってるじゃない。怒ったならその勢いで、ちょっとくらい動いてきなよ。虎之助が、彼女を好きにしてもいいの?」

「そんな事、俺が知るか! ……だが、虎之助が調子に乗るのは不愉快だ。その話、乗ってやらない事もない」

「じゃ、よろしく。じゃあ大海、またね」

 佐吉は大海から荷物を奪い、吉継に投げて渡す。そして大海の手首を掴むと、引っ張って歩き出した。

 佐吉の足取りは早く、大海は転びそうになりながら後をついていく。特に会話もなく気まずい時間は、あっという間に過ぎていった。

 侍女達の屋敷の前に着けば、佐吉は手を離し大海を突き飛ばす。

「痛っ……もう、少しは気を遣えないのかい、あんたは!」
 
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