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戦国ラブドール
第5章 壊れたドール
だが大海の文句など気にもかけず、佐吉は吐き捨てる。
「一つ言っておく。俺は、無責任な発言をしたつもりは毛頭ないからな」
それだけ言い残し、佐吉はさっさと戻ってしまう。手首にはまだ残る佐吉の痛み。佐吉が何にそこまで苛々しているのか分からず、大海にもいつの間にか眉間の皺が移っていた。
佐吉は行長を呼びに行くと、自分は吉継の家には戻らず長浜城の中へと向かう。佐吉が向かったのは、並みの武士や侍女が立ち入る事は許されない、奥の部屋だった。
「夜分に申し訳ない、取り次ぎをお願いしたいのだが」
部屋の近くで警護をする小姓は渋い顔をするが、佐吉が厳しく睨めば部屋の中へ入る。そして中の主と話をすると、顔を出し佐吉を呼びつけた。
佐吉は部屋の前に座り、両手を揃えて襖を開く。
「夜分に申し訳ありません。急ぎ申し上げたき儀がございます」
膝の前に拳を置き、佐吉は平伏する。それを見た部屋の主は、苦笑いして呼び掛けた。
「そうかしこまらずともよい。さあ、おいで佐吉」
寝具は引かれているが、部屋の主は机に向かい筆を取っている。佐吉は顔を上げると、彼の名を呼んだ。
「はっ、秀長様」