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戦国ラブドール
第8章 紅天狗(べにてんぐ)
運命の朝、大海と小夜を迎えに来たのは吉継だった。
「おはよう、今日は一日よろしくね」
吉継に好意的な小夜は、目を輝かせて大海よりも先に頷く。どんな意図があれ、外へ出れば気晴らしにもなる。大海はひとまず小夜が楽しめるなら余計な手出しはすまいと、小さくお辞儀を返した。
「今日は、一通り城下を巡って景色を楽しみながら、茶屋で食事でもしようと思ってるんだ。お小夜ちゃんは、僕以外の人と会うのは初めてだよね? 乱暴で怖い奴らだけど、僕が守ってあげるから頼ってね」
「あ、ありがとうございます」
「じゃ、行こうか。皆は、門の前で待ってるから」
甘い顔をする吉継に気を揉み、大海は庇うように小夜を背に隠す。そんな大海に、吉継は笑い声を漏らし呟いた。
「ああもう、単純で可愛い」
「ちょっと、小夜に手を出したら許さないからね!」
「うん、君のそういうところ、からかい甲斐があって好きだよ」
「訳の分からない事言ってないで、早く行くよ。小夜、何かあったら、すぐあたしを頼るように」
小夜の手を引き、大海は城門へと足を運ぶ。吉継は後ろからそれを眺めながら、柔らかい視線を送っていた。