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戦国ラブドール
第9章 犯す女
「負の感情を溜めるだけ溜めた人間は、ふとした瞬間死へ傾く。年が下だから、子だからと軽んじられて、頼りにされない歯がゆさに何度襲われたか」
大海はふと、小夜を思い出す。小夜は姉妹で支え合いたいと大海に語った。小夜もまた、孫六のように歯がゆさを感じていたのかもしれないのだ。感情に任せてすぐ切腹などと言ってしまう己の無責任に、大海は胸が痛くなった。
孫六に連れられ城へ戻れば、そこには全員が揃って待っていた。大海の着物は土に汚れ、肌には所々擦り傷がある。何かしらの被害を受けた事は、誰が見ても明らかだった。
「お姉ちゃん!」
小夜はすぐに大海へ飛びつき、ひとまず無事であった事に涙を零す。孫六は皆の顔を見渡すと、大海の名誉を傷つけないため嘘を交えて説明を始めた。
「町外れの廃寺の付近で、大海が追い剥ぎに遭っていた。私が止めに入り大事には至らなかったが、大海が落ち着き歩けるようになるまで多少の時間を要したため、戻るのが遅れた」
大海だけではなく孫六も心配だったのか、虎之助は孫六の両手を掴むと大きく安堵の溜め息を吐く。