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戦国ラブドール
第9章 犯す女
「どうしてあんたは、そこまであたしに義理立ててくれるんだい?」
「それは……」
すると孫六は顎に手を当て、また眉間に皺を寄せる。
「さあ」
そして返ってきたのは、たった二文字の言葉だけだった。
「どちらにしても、小夜を置いて逃げる事は出来ないよ。せっかく馬まで出してくれたのに、無碍にして申し訳ない」
「そう言うと思ったから、別に構わない。じゃあ、帰るぞ。皆心配している」
孫六は着物を整え、盗賊達が残していった着物を拾う。大海はそれを見つめながら、もう一度頭を下げた。
「あたし、あんたには迷惑を掛けっぱなしだね。年上なんだからあたしがしっかりしなきゃいけないのに、ごめん」
「年上だからといって、常に肩肘を張る必要はない。辛い時に心の内を明かさなければ、責任に押し潰されてしまうだろう。お前は少し、人に頼るべきだ」
「けど……」
「――私の母もそういう人間だった。父を失い、行くあてを失っても、私や弟の前では常に強い母だった。そういう人間を見ていると、私は怖くなる」
孫六がぽつりと語った言葉に、大海は返事が出来なかった。また、孫六も答えは求めていないようで、構わずに呟いた。