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戦国ラブドール
第9章 犯す女
人の寄らない廃寺に武士が現れたのは、偶然ではなく知り合いの女を探すため。そう考えれば、つじつまも合う。
「あの着物の質から見ると、あの女は姫ではなく侍女か何かだろう。長浜城に潜り込んで、素性を探るぞ」
「それならあっしが。親父が庭師をやってるんで、手伝いついでに聞いてきますよ。なに、あの珍しい髪色です。すぐ素性は知れるでしょう」
「赤月さん、わざわざ調べるって事は、あの女を捕まえに行くつもりですか?」
「ああ、俺はあいつが気に入った。いや……正確に言えば、何かあいつから感じるものがあるんだよ。この気持ちがなんなのか、もう一度会って確かめたい」
赤月は胸に手を当て、ざわつく想いに浸る。すると隣に座っていた頭巾の男が肩に手を乗せた。
「私も力を貸そう。長浜城の武士共に一泡吹かせるのは、面白そうだ」
「おう、頼むぜ黒月!」
頭巾を脱いでしまえば、傾奇の仮面が外れ町民の日常に帰れる彼ら。町に溶け込めば、誰も存在に気付かなくなる。それが今まで『紅天狗』を一網打尽に出来なかった原因でもある。
しかし彼らは、一歩先の闇へ進もうとしている。そして武士達も、彼らを捕らえるため一歩を踏み出そうとしていた。