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戦国ラブドール
第9章 犯す女
「だから、あたしは間違ってるだろ?」
「いや、間違ってない。運命を受け入れる前に抗うのも、また人ってもんだろ。例えば家が滅ぶぞって分かった主君が、大人しくやられるか? 普通は抵抗して、それでも駄目になってから、切腹するもんだろ」
「それは……そうだけど」
「お前は今、月橋家の主君みたいなもんだ。小夜はいわば姫様だ、降伏して主君の血筋をどうにか繋ぐのも、姫の大事な役目だろ。けどお前は、家のために最後まで立ってなきゃならねぇ。立場が違えば生き様も違う、何も間違った事なんかねぇよ」
市松の言葉は、疲弊していた大海の心を揺らす。杯を置いた市松は、大海の頬を伝う涙を拭った。
「もう打つ手がないって、気付いちまったんだな。俺にはまだ分かんないが……辛いだろうな、負けを認めなきゃならねぇのは」
「……そっか、そうだね。あたしは、気付いちまったんだね。どう頑張っても、もう帰れないって」
「じゃあ、後は潔く認めるしかないな。けど……今まで、頑張ったんだろ。それは否定するな。お前の戦いは、間違いなく誉れだ」
いくら拭っても、涙は止まらない。市松は大海を抱き寄せると、ただ黙って胸を貸した。