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戦国ラブドール
第1章 拐かされた少女達
歩く度にガシャガシャと鳴る鎧の音に、村人達はただ怯えるしかなかった。織田家の家紋である木瓜紋は、この辺りを治める畠山家の救援へやってきた証である。だが武士達はどうしてか目的の城の建つ手取川の向こうへは渡らず、村へとやってきたのだ。
「これで、この村にある蓄えは全てです。床板ひっくり返しても、後は何にもありません。どうか、これでお許しを」
汚いぼろを纏った老人が、隊の中でももっとも派手な鎧を着た小柄な男へ平伏する。ちょうど稲刈りが終わり、村の命を繋ぐために蓄えた米を丸々差し出すのは厳しい事である。だが、戦があれば武士が地元の農民から兵糧などを接収するのは定め。ましてや、僧侶すら焼き払う織田の軍を前にして、何も出さず穏便に帰らせる事など不可能だった。
「米は、半分でよい」
小柄な武士は、何に苛ついているのか分からないが、村へ来てからずっと顔をしかめていた。猿のように寄った皺は滑稽であるが、醸し出す殺気を感じれば揶揄する口など出ない。だがそれだけ不機嫌であるにも関わらず、武士が口にしたのは意外にも温情のある言葉だった。