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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
「どうにもならないって……どうにかするよう学ばせるのが、主君の役目では?」
「では、人は皆なんでも思うままに出来るか? お前は、それが可能かどうか、よく分かっているだろう」
「それは……そうですが」
「何でも思う通りに出来ると思うから、人は驕り、他をねじ伏せようとする。しかし自分の思うままを通してばかりでは、いずれしっぺ返しを食らう。例えば、信長様がかつて平手殿を失ったようにな」
平手とは、織田信長がうつけと呼ばれていた頃、教育係を務めていた者の名である。彼は信長を諫めるため切腹し、その死を目の当たりにした信長は覇道へ真摯に取り組むと決意したのだ。戦国の世において、平手の諫死は家臣の鑑として、広く伝えられていた。
だがその話は、信長から見れば、自分の放蕩が忠臣の命を奪ったという愚かな話でもある。思い上がりがもたらす不幸は、誰の身にも起こり得るものだった。
「あやつらは、まだ若い。そして、拙者という大きな庇護がある。それ故、ままならぬものをあまり知らぬ。だからいつまでたってもいがみ合うのだ」
「だから、あたしが必要だと?」