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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
「大海、お前のその髪は、長浜で暮らす覚悟の表れだな」
「どうして、それを」
「お前のような人間ほど、考えを読みやすいのだ。先日に比べ光の宿る真っ直ぐな目をしているのを見れば、なおさらな」
秀吉は不意に口元を引き締めると、扇子を広げる。
「お前に、拙者の真意を伝えておきたい」
「真意……?」
「子飼い達の仲だ。お前を介し仲良くなるよう渡したが、お前はそれをおかしいとは思わなかったか?」
「おかしいというか、そんな事で仲良くなるなんて、無理だとは思いました」
「そう、その通り。一人の女を共有して仲良くするなど、絶対に不可能だ。例えばその女が醜女なら、押しつけ合いを始める。美人なら独占欲に煽られ、仲違いする。努力してもいずれ綻びが出て、諍いが起きるだろう」
秀吉の言葉はもっともだが、となると不思議なのは、そこまで分かっていて大海を下げ渡した行為である。大海の疑問を察すると、秀吉は扇子を扇ぎながら口を開いた。
「奴らに必要なのは、協調性ではない。この世には思うままにならないものがある、と思い知る事よ」