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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
「あなたが、私を連れ出したのではないですか」
「半兵衛……分かっている、しかし!」
「あなたが、何度断っても退かずに私を誘ったのではないですか! 天下のため、私が必要だと!」
「もうお前の力はいらぬ! 織田は大きくなった、お前の代わりを務める技量を持つ者も山ほどおるわ!」
秀吉は床を拳で叩けば、しばらく沈黙が走る。それを破った秀吉の声は、涙が混じっていた。
「もう、信長様の天下は目に見えている。お前の策など不要だ、戦場に立つ必要など、ない!」
「秀吉! 私は――」
半兵衛は負けじと声を上げるが、それは半兵衛自身の体に遮られる。肺が悲鳴を上げ、意識が遠退く。秀吉を説得するなら、力強く立っていなければならない。だが体は冷たい床の上に投げ出され、意志との繋がりを失っていった。
「半兵衛っ!! 誰か、医者を呼べ!!」
秀吉はすぐに駆け寄り、外の小姓を呼びつける。楽な体勢に変えてやろうと抱き抱えれば、半兵衛は男とは思えない軽さだった。
「この、馬鹿者……! だから、隠居しろと言っているのに……」
秀吉が零す心配の声も、病に犯された半兵衛の耳には既に届いていなかった。