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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
「姫路城を守る、黒田官兵衛という男は知っているな? あやつは出来る男だ。知恵も大気も、勇気に至っては拙者よりも溢れておる」
「私とて、その三つは心得ております」
「しかし、半兵衛。お前には何より大事なものが、一つ足りぬ」
秀吉の言葉に、半兵衛は鼓動が跳ねる。秀吉に言われなくとも、半兵衛自身の心臓が、一番それを知っていたのだ。
「……拙者が留守にしていた間も、一度倒れたそうだな」
「それは……しかし、大事には至りませんでした。この通り、今は元気です」
「血色が良いのは、頭に血が上っているからだろう? 怒りが収まったその時、倒れないでいる自信はあるのか」
「倒れても、私は立ち上がります!」
「半兵衛、拙者に全て言わせるつもりか? お願いだ、引き下がってくれ。拙者とて、こんな事を言いたくはない」
だが、半兵衛は退かずその場に留まる。秀吉は長い溜め息を吐くと、うなだれた。
「お前を中国攻めに連れて行く気はない。今後の戦は、官兵衛を拙者の軍師として連れて行く。隠居しろ、半兵衛」
予想していた言葉でも、実際に投げ掛けられた瞬間は衝撃が走る。半兵衛は拳を握ると、震える声で呟いた。