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戦国ラブドール
第11章 苛立ちの半兵衛
「志麻さんに、また怒られる」
大海は着物を身に着け壁にもたれながら座ると、空を見上げながら呟いた。
「唐突に、どうした」
「いや、この前も着物汚して怒られたから。普通に仕事して汚れたならともかく、そうでないなら気を付けろってさ」
「あの神経質でうるさい女の戯言など、放っておけ。いちいち聞いていたら、身が持たない」
隣に立つ佐吉は、志麻が嫌う近江派の一員である。あまり志麻を快く思っていないのか、冷たく言い捨てた。
「……怒られるほど頻繁に、着物が汚れるような事をしなければいけないのか」
佐吉の疑問に、大海は答えなかった。膝を抱え、体を縮こませる。
「こんな事を続けた先に、一体どんな未来があるっていうんだ」
「今は、まだ分からない。あたし、ここに来てから分かんない事だらけなんだよ。自分の気持ちも、他人の気持ちも」
「分からないなら、なぜ突っ込んでいく? 分からないなら、なお逃げるべきだろう」
「小夜はさ、逃げてないんだよ。こんな状況でも笑って、あたしの支えになるって言ってくれてるんだ。友達を作って、うまくやっていこうとしてる」