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戦国ラブドール
第11章 苛立ちの半兵衛
牽制されて、佐吉の眉間の皺はさらに深まる。吉継はそんな佐吉の背を押すと、部屋の外まで追い出した。
「吉継! お前はあんな理不尽を許すつもりか!」
「許すも何も、本人が髪を落としてまで受け入れるって決めたんでしょ? それを周りがうるさく干渉する理由がない」
「本人が良くても、俺は気が済まないんだ!」
「佐吉、一体君は彼女の何なの? 家族でも恋人でもないのに、どうしてそこまでこだわるのさ」
「それは――」
吉継の質問に、佐吉は口を閉ざす。改めて訊ねられると、確かにそこまでする義理は見当たらなかったのだ。
同時に、何もかも分からないと打ち明ける大海の姿も頭に浮かぶ。気が付けば、口はその言葉に合わせて動いていた。
「……分からない」
「じゃあ、分かってから出直してきて。自分でもよく分からないものを、人に協力させないでよ」
吉継の助言は得られず、佐吉はそのまま追い出されてしまう。残るのはいつまでも晴れない靄と、救う手立てを知りながら、それを実行できない自身の不甲斐なさだった。
夜は、まだ長く続く。輝く月も、雲に隠され今は見えなかった。