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戦国ラブドール
第12章 月の掛け橋
 
 それは大海を抱いたせいなのか、単に病が悪化しただけなのか。どの道吉継は、本音を大海に語らないだろう。大海は吉継を横にさせ寝巻きを整えると、立ち上がった。

「ちょっと待ってな、何か冷やすもの持ってくるから」

「戻ってこなきゃ、僕死んじゃうからね……三年以内に呪い殺されたくなきゃ、すぐ帰ってくる事」

「そんな脅し掛けなくたって、すぐ戻るよ。佐吉を追い払っといて、看病もしないんじゃ、さすがに申し訳ないからね」

 大海は水の入った桶と手ぬぐいを持って戻り、時間が許す限り看病に回る。体が弱い、と言われてもあまり実感が沸かなかったが、改めて見てみれば確かに吉継はか細い。半兵衛が憂うのも、無理はなかった。

(けど、互いに慕ってるのに会えないなんて、悲しいじゃないか。体を取り替えられるなら、いくらでも貸してやるのに)

 女としては育ちすぎている自分の体を恨めしく思ったその時、大海はふと思い付く。

「――吉継」

「ん? どうしたの」

「病が良くなったら、あたしに囲碁を教えてくれないかい?」

 唐突な申し出に、吉継は訝しげな表情を見せる。大海はそんな吉継の額を濡れ手拭いで拭きながら、さらに語った。
 
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