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戦国ラブドール
第13章 欲というもの
「まあ、この際あんたがぼんだろうがなんだろうが構わないけど……」
すると大海は神妙な面持ちで、行長に耳打ちした。
「本当にこの家の主が、あたしに会いたいなんて言ってるのかい?」
大海が小夜を置いてまで堺に来たのは、道楽のためではない。時は遡り、長浜を出立する前日。行長は、他の武士達が知らない取引を大海へ持ちかけていたのだ。
「大海さん、この間話したあなたの父親の素性についてですが……実は父が大変興味を示しているんですよ」
人払いまでして切り出された話に、大海は首を傾げる。
「それって、あたしの父親が近江の商人だったかもしれないって話? でも、そうだと決まった訳じゃないだろ」
「だから、それを確かめるために堺へ来ませんかとお誘いしているんです。なにぶん昔の話ですから、父の方が詳しい話を知っています。もし本物の月橋であれば、父は大海さんの父親をこちらに呼び寄せて話がしたいそうですよ」
「そういう事なら、あたしは別に構わないけどさ。小夜を一人にするのは不安だね……あの子だって家族なんだ、厚かましい願いだけどさ、一緒に行っちゃまずいかな」