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戦国ラブドール
第13章 欲というもの
「父に書状を!?」
「もちろん、彼がこちらにやってきた暁には、親子の対面もはからいましょう。その時は、二喬揃って堺へいらっしゃい」
「しかし……いいんですか?」
「むしろ、年寄りの道楽に付き合わせて申し訳ないくらいです。結局はね、わたしが九兵衛さんと話したいだけなんですよ。その大義名分に、あなたを利用しているだけです」
隆佐はそう言うが、大海にとってはいくら頭を下げても足りないくらい有り難い申し出である。もう二度と会えないと覚悟した父。しかし会えるのならば、会いたいと思うのが人情だった。
大海は姿勢を正すと、手を付きしっかりと頭を下げる。場をわきまえた丁寧な所作に、ますます隆佐は確信を深めた。
行く先の見えない大海にとって、隆佐の申し出は夜を照らす、あらたまの日差しである。だが九兵衛にとっては、長い月日を掛けてようやく開けた光明となるかもしれない。申し出が伝わったその時、父がどう感じるか。再会出来たその時、大海はそれを訊ねてみようと決めた。
「では、能登の村の場所を教えていただきますか?」
堺へ足を運んだのは、無駄足ではなかった。大海は話を続けながらも、喜びを隠せなかった。