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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
 






 堺の観光は中途半端に終わってしまったが、時間は明日もある。小西邸へ戻った後も、虎之助が思い描くのは大海とのひとときだった。

 だが大海は、目の前の夕食にすっかり目を奪われている。息子が相手なら饗応に金を使わなくて済む、と隆佐は語っていたらしいが、出された膳は大海からすれば身分にそぐわない上等なものだった。

「……鮭、好きなのか?」

 大海が特に目を輝かせるのは、大きな鮭の切り身。まだ聞けていない告白の返事とは打って変わって、朗らかに答えた。

「大好きだよ! 能登の人間で、魚が嫌いな人間なんかいないさ」

「そういえばお前、能登の出だったな。能登は寒いんだろ? それに比べたら、長浜や堺は住みやすいんじゃないか?」

「確かに、比べるとこっちの方が暖かいね。寒いと身が引き締まって、自然と背筋も伸びるけど……でも、暖かい方があたしは有り難いかな」

「そうか。いつか能登の地も、見てみたいな。出来れば、暖かい季節に」

 和やかで落ち着いた空気に、虎之助はもう少し踏み込みたいと考える。だがそれを遮ったのは、眉をひそめ不機嫌な様子の行長だった。
 
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