この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
堺の観光は中途半端に終わってしまったが、時間は明日もある。小西邸へ戻った後も、虎之助が思い描くのは大海とのひとときだった。
だが大海は、目の前の夕食にすっかり目を奪われている。息子が相手なら饗応に金を使わなくて済む、と隆佐は語っていたらしいが、出された膳は大海からすれば身分にそぐわない上等なものだった。
「……鮭、好きなのか?」
大海が特に目を輝かせるのは、大きな鮭の切り身。まだ聞けていない告白の返事とは打って変わって、朗らかに答えた。
「大好きだよ! 能登の人間で、魚が嫌いな人間なんかいないさ」
「そういえばお前、能登の出だったな。能登は寒いんだろ? それに比べたら、長浜や堺は住みやすいんじゃないか?」
「確かに、比べるとこっちの方が暖かいね。寒いと身が引き締まって、自然と背筋も伸びるけど……でも、暖かい方があたしは有り難いかな」
「そうか。いつか能登の地も、見てみたいな。出来れば、暖かい季節に」
和やかで落ち着いた空気に、虎之助はもう少し踏み込みたいと考える。だがそれを遮ったのは、眉をひそめ不機嫌な様子の行長だった。