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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
「そんな田舎の土地、今さら見たってなんの得になるんです? あの辺りはもう上杉の領土です、危険な目に遭いたいなら、勝手にどうぞ」
だが故郷の不穏な話に、虎之助より早く大海が反応する。
「やっぱり能登は……上杉に取られたのかい? いや、分かってる。あんたら織田が逃げてくるくらいだ、殿様は、死んだんだね」
「大海さん、そう嘆かないでください。織田方の私が言うのもなんですが、能登の人間にとって、頭が織田でも上杉でも、さして生活は変わらないでしょう? 平民は、誰が長であろうと、ただ毎日を過ごすだけです」
「そりゃそうだろうけどさ、なんか……辛いじゃないか」
「そんな時は、お祈りしましょう。よければ明日、一緒に宣教師のお話を聞いてみませんか? 彼らは皆、命の危険も省みず海を越えてこの日本にやってきた人間です。下手な人間より、言葉に深みがあります」
「あたしが、ついて行ってもいいのかい?」
「もちろん。王はもちろん、地を這う奴隷まで、デウスは私達に手を差し出してくださいます」
好奇心の強い大海が、その誘いに興味を示すのは無理のない話である。