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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
 
「まさか、今日も宣教師と一緒に入れって言うんじゃないだろうな」

 虎之助が疑いの目を向ければ、行長は案外あっさりと否定する。

「いえ、彼らはデウスの教えにより女性と共に入る事は禁じていますから、それはありえません。入るとすれば、私達の後でしょう」

「……そのデウスを信仰するお前も、女と共に入るべきではないんじゃないのか?」

「だって、風呂を温めるための薪がもったいないじゃないですか」

 けろりと言い放つ行長に、虎之助は頭を抱える。自分の都合でころころと信仰を曲げる身勝手さは、つくづく虎之助と合いそうになかった。

「大海、いっそお前も時間を分けて入ったらいいんじゃないのか? こんな、鼻の下の伸びた奴と一緒じゃ落ち着かないだろ」

「でも、薪がもったいないのは事実だろうし、そんな文句を言える立場じゃないだろ? 入らせてもらうんだから、有り難い限りさ」

 湯屋で、男女が入り混じって入るのは特段珍しい事ではない。そして風呂を沸かすにも財力がいるのも、また道理だ。分かれて入れと言う虎之助の方が、わがままである。デウスを信仰している訳でもないのだから、大海が頷くはずがなかった。
 
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