この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
薄暗い部屋の中に、たちこめる湯気。息を吸えば、蒸された空気で喉が潤い温まる。行水では得られない、体が芯まで和らぎほぐれる感覚。湯気は、内に溜まる悪いものを汗として全て流した。
「湯治場みたいに思い切り湯を張って、中に浸かれたら最高なんですが……まあ、今日は蒸し風呂で我慢してください」
大柄な三人が同時に入れば、中は大分狭い。行長に首を向けただけで、大海の肩と両脇を挟む二人の肩が触れた。
「これを我慢するなんて言ったら、そいつは贅沢だよ。あんたや虎之助はともかく、あたしまで良くしてもらって申し訳ないくらい」
「たとえ侍女であろうと、秀吉様の使者一行ですから。下手な饗応で機嫌を損ねられたら、今後の取引に影響します。こちらとて、純粋な善意ではありませんよ」
「理屈じゃそうでも、実際にそれが出来ない奴なんか山ほどいるだろ。身分を気にしないで振る舞えるのは、大物の証拠さ」
「それを聞いたら、父が喜びます。次に顔を合わせたら、ぜひ言ってやってください」
すると大海は、不意に体を跳ねさせる。虎之助が大海の腰を抱いて、自分の方へ引き寄せたのだ。