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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
「虎之助さん、お触りは禁止ですよ」
「お前みたいな奴が近いと、こいつも気が滅入るだろ。優しさだ」
「その言葉、そっくりそのまま返しますよ。全く、人目も気にせずみっともない」
行長も大海の腰に手を回し、引っ張り合いを始める。大海はまたも流れる険悪な空気に、風呂では本来流れないはずの冷や汗が流れた。
「――ちょうどいい、じゃあ一つ勝負しましょうか? 風呂とは長く入りすぎると、のぼせるものでしょう? どちらが長く入っていられるか、我慢比べといきましょう」
「勝った方が、その後大海と二人で過ごせる訳か」
「えっ!? あたしも我慢比べしなきゃいけないのかい!?」
「いや、風呂は良い頃合いに上がれ。一緒に過ごすのは、その後な」
「おや、虎之助さん。もう勝ったおつもりで? 私が勝ったら、今日の大海さんは私のものですよ」
「勝負事で、俺が負ける訳ないだろ? のぼせながら後悔しな」
突然始まった我慢比べだが、大海は気まずさに耐え切れず、早々に上がった。
大海が去ってからすぐ、行長が口を開く。それは今までの軽い口調とは違い、重く冷めた言葉だった。