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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
行長も大地が丸い理論は詳しくないらしく、さらりと投げ出される。そして疑問は放置のままに、大海へ訊ね返した。
「それを見ていると、思いませんか? 世界は、海で出来ているって」
改めて見てみれば、大地より海の方が広い。海が途方もなく広いのは大海も知っているが、確かに世界は海で包まれているように見えた。
「あなたの名前……月橋の話を思い出した当初は、近江という国への未練から付けた名前だと思いました。しかし、明日を見据えた希望のある下の句を聞いて、そんな後ろ向きな理由ではないと思い直したんです」
「未練じゃないとすれば……なんだと思うんだい?」
「近江だの日本だの、そんな小さな枠の中ではなく、もっとずっと大きなもの――世界を見据えていたのではないかと」
行長の言葉に、大海はしばらく目を丸くして黙り込む。そしてくすくすと笑い声を立てると、手のひらでまた地図を転がした。
「そっちの方が、想像出来ないや。あんたは、あたしの父を過大評価してないかい?」
「どうでしょうね。でも、あなたの生き様を見ていると、そう思えてならないんですよ」