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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
堺で過ごした十日ほどの日々は、能登では知る事のない賑やかさと新しい見聞を大海に与えた。虎之助と行長が終始睨み合っているのは多少気まずいが、堺での時は大海にとって無駄ではなかった。
そして、近淡海の恵みを受けた長浜城へ戻ると、大海は吉継の屋敷へ足を運ぶ。迎えた吉継は病もすっかり良くなっていて、いつも通り飄々としていた。
「ただいま、吉継」
真っ先に大海から出た言葉に、吉継は目を丸くする。そして大海の中に生まれた変化に、顔を綻ばせた。
「ふぅん……そっか、ただいまなんだ」
「そりゃ、帰ってきたらただいま戻りました、だろ?」
「うん、そうだね。君の覚悟は、本物だ」
「覚悟? 何が言いたいのか、ちっとも分からないよ」
「分からなくてもいいよ、独り言だから。おかえり、大海」
吉継が何を気にしているのか、大海はどうしても理解出来ず首を傾げる。だが吉継はすこぶる機嫌がいい。悪い事ではないのだろうと思い直し、ひとまず頭を切り替えた。
「あんた、今時間あるかい? よければ、この間約束した囲碁を教えてほしいんだけど」