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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
外にまで響くのではないかと思うほど、空気を激しく震わせ広がるいびき。夜の静けさも朝の爽やかさも破壊する無神経な音に、大海は目の隈をさらに深めた。
「もう、外はとっくに明るくなってるんだよ! 早く起きな!」
大海はかいまきを剥ぎ、よだれを垂らしながら眠る市松を怒鳴りつける。そこまでしてようやく呑気な眠りから解放された市松は、寝ぼけ眼で上半身を起こした。
「ふわあ……なんだよ、もうちょっと寝てたっていいだろ」
「いいわけないだろ! あんた、あたしの着物どこにやったのさ。朝の仕事だってあるのに、裸のままで出られないじゃないか」
部屋中をひっくり返しても、なぜか見つからない着物。それが、大海をこの部屋に足止めしていた。かいまきに身をくるんで出て行く手もあるが、後を濁す方法ではいつ志麻に怒鳴られるか分からない。大海は、なるべく穏便に済ませたかったのだ。
「……仕事?」
「そう、あんただってお侍様なんだから、だらしなく寝てる場合じゃないだろ。こうしてる今も、あんたの主君は戦に出てるんだよ」