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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
行長は、生まれてこの方一度も女相手に苛立ちを覚えた事がない、と自負している。本当のところは自分でも定かではないが、少なくともこの時はそう思っていた。だが今は、胸に下げたデウスの象徴を引きちぎり、力いっぱい志麻を殴りたい衝動に襲われていた。
「そもそも、あなたのような新参者が、市松さんや虎之助さんのものである彼女と接触しようとする事が否ではないのですか? ご自分の立場を、もう少し見直してはいかがかと」
人を人と思わず、見下す目。きついものの言い方。こちらを馬鹿にした挙動一つ一つが、行長を刺激する。志麻は秀吉が足軽大将であった頃からの古参ではあるが、そこまで行長を軽視する資格はない。
現に秀吉と、その妻であるおねねは、行長を他の子飼いと分け隔てなく受け入れたのだ。上司に従い存在を認めるのが、本来の義である。
それを認めたがらないのは、結局自分が居心地の良かった時代の縄張りを荒らされている、と感じるからだろう。侍女の仕事は有能でも、志麻に大身を支える器は見当たらなかった。
行長はつい溜め息を漏らしてしまうが、それはさらに志麻の神経を逆撫でしてしまう。志麻はここぞとばかりに声を荒げ、行長を攻撃した。