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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
「人が話をしている時に溜め息とは、随分立派になったものですね。ああ、まったくこれだから近江の人間は嫌だ、こちらが尾張の田舎者だからと馬鹿にしているんでしょう!」
「誰が尾張を田舎と馬鹿にしたんですか。尾張は交易も豊かで潤ってますし、商いもやりやすい国ですよ?」
「京に近い人間は、そうやって口ではいい事を言いながら、陰でほくそ笑むんでしょう!? 耳障りのいい言葉に騙されると思ったら、大間違いですよ!」
「まあ、京の人間の中には、多少地方を見下げた言い方をする人もいますけど……ここは近江ですし」
行長が取り繕っても、志麻は聞く耳を持たない。ここからどう志麻を切り崩していくか。考えるだけで、行長は頭が痛くなった。
(本来ならば長期戦が一番ですが、今日はすぐ情報が欲しいですしなぁ。これは難儀ですわ)
向こうは、こちらの話す事全てを嫌味に変換して受け取っている。しかし交渉とは、信頼が先立って行われるものだ。本来なら、今は信頼を得るため足場を固める段階。交渉に持ち込もうとする事自体が、悪手であった。
「志麻さん、彼女がいなくて困っているのは、私だけじゃないんですよ?」