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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
「このっ……木偶の坊が!! なんでこんな馬鹿な真似したんだっ!!」
市松は鼻の下を拭い血の混じる唾を吐くと、虎之助の胸ぐらを掴む。
「っせぇな……へたれ虎にゃ言われたくねえよ!」
「誰がへたれだ、屑野郎が!!」
「何度でも言ってやるよ、へたれ虎! 一歩踏み出しゃ済む事をぐだぐだ一人で悩んでるような奴は、へたれで充分だ馬鹿野郎!!」
虎之助がまた拳を振るえば、市松の手は離れる。だが瞳は罪悪感どころか虎之助へ怒りをぶつけ、きつく睨んだままだった。
「俺相手に乗り込んでこれるなら、半兵衛様が相手でも止めに入ってりゃよかっただろ! お前がしっかりしてりゃ、俺がこんな真似しなくても良かったんだ!!」
半兵衛の名を出されると、虎之助は一瞬たじろぐ。市松への怒りで忘れていた矛盾が頭をかすめ、終わりのない悩みに突き落とされそうになる。だがそれも、続く市松の言葉で吹き飛んだ。
「自分でも馬鹿な真似してんのは、分かってんだよ……けど胸の中がもやもやして、どうにもならねぇんだよ! お前がしっかり大海を捕まえとかないから、馬鹿な希望を抱いちまうんだ!」