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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
怒りだけではなく、悲しみの混じる叫び。虎之助はここで初めて気が付く。物事には、全て理由がある。そして志麻は、市松がずっと悩んでいると話していたと。
「殴り足りないなら、好きなだけ殴ってくれよ! その痛みがなきゃ、俺は馬鹿だからお前の気持ちを汲んでやれねえんだよ!」
「市松……お前、もしかして」
「……ああ、俺は最低だよ。親友が惚れた女に横恋慕して、あわよくばと思う屑野郎だ。もっと殴れよ、ほら!」
市松は床へ大の字になって寝転がり、無抵抗を示す。裸のまま身を投げ出す姿は滑稽ではあるが、虎之助の腹の中よりもずっと筋が通っていた。
「……もしかして、大海をここに閉じこめたのは、忘れるため、か?」
「ああ、そうだ。三日ばかり借りて、飽きるまで抱けば、綺麗さっぱり忘れられると思ったんだよ!」
「……この、馬鹿」
「ああ馬鹿だ、大馬鹿だ。全くの無駄だった。飽きるどころか、ますます嵌まっただけだった。なあ、なんであいつはあんなに可愛いんだ? 他に女なんて山ほどいるのに、なんであいつだけが輝いて見えるんだ? 目が眩んで、お前の事なんか忘れちまうんだよ」