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戦国ラブドール
第19章 愛憎
大海が市松と話をしていたその頃。吉継は書庫にこもる佐吉の元へ向かっていた。
「佐吉!!」
血相を変えて現れた吉継に、佐吉は眉間の皺を深くする。そして吉継は勢いのまま、不思議がる佐吉を棚の前に追い詰めた。
「なんで、僕に何も話さなかった!」
ちょうど佐吉の顔の横、棚に拳を叩きつけ、吉継は怒鳴る。佐吉が益々皺を深めれば、吉継はさらに追及した。
「銅雀台の賦、知らないとは言わせないから」
「……なぜ、それを」
吉継の威圧に汗を垂らし、佐吉は訊ねる。吉継には隠し通していた、紅天狗の宣戦布告。もはやごまかす事は、不可能だった。
「お小夜ちゃんがなんかおかしいから、色々と調べたんだ。それで……二人が危ないなら、どうして僕に助けを求めなかったの」
「こんな些事に、お前の力など必要ない。藤堂や行長も付いている、余計な口出しは不要だ」
「そういう事言うんだ? じゃあ内通者は見つかったの? 紅天狗を捕まえる見込みは? 佐吉が聞き込みで手掛かりを得るなんて、無理に決まってる」
吉継の苦言に、佐吉は反論が出来なかった。事実、まだ紅天狗の尻尾は掴めていないのだから。