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戦国ラブドール
第19章 愛憎
「そういうのは僕の役割でしょ。知ってたら、もっと早く動けたのに……」
「う、うるさい! 俺だって、それくらい出来る! 大体、情報を掴んだってお前が無茶をしてまた倒れたらどうする! 自分を守りきれない奴に首を突っ込まれては、迷惑なんだ!!」
「……この、大馬鹿!!」
吉継は息を切らし、うなだれる。佐吉がどうして何も話さなかったのか、その理由は聞かなくても明らかだ。それでも怒鳴らずにいられない程、吉継の胸には渦巻く思いがあった。
「それで彼女達が攫われでもしたら、それこそ死んでも悔やみきれないよ……」
「攫われなどしない! この件は、俺が全て片付ける!」
「だから、どうやって!! ろくに聞き込みも出来ない上に、守るべき大海に八つ当たりして拗ねたまま逃げ出した君が、どうやって片付けるのさ!」
吉継は言葉にしてから、自分の失言に気付く。すぐに取り繕うが、出てしまった言葉は取り戻せなかった。
「……ごめん、言い過ぎた」
佐吉は泣いてしまうのかと思うほど目を赤くし、拳を震わせる。そして何も返事しないまま、吉継を置いて部屋の外へと駆け出していってしまった。
「……馬鹿は、僕の方だ」
吉継はその場にへたり込むと、頭を抱える。やるべき事ははっきりと頭の中にあるのに、憤りが目の前を曇らせていた。
そして吉継は、もう一つ大きな読み間違いを犯していた。佐吉と喧嘩した大海は、気まずくて自分達を避ける、そう考えていた。だが大海は高虎や市松の想いを知り、分からない思いを避けるだけではいけないと動き出していたのだ。