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戦国ラブドール
第19章 愛憎
 
「この間は、ごめん!」

 真っ直ぐに響く大海の声に、佐吉は目を見開く。頭を下げたままの大海はそれに気付かず、続けて話す。

「婚姻ってだけで、めでたいものだと思ってたけど……人生を左右するんだ、真面目なあんただからこそ、悩む事があるだろう。無神経な事言って、申し訳なかった」

「なぜ、お前が謝る? いや……何を謝っているんだ? お前は自分の何を悪いと思って、頭を下げているんだ」

 大海が言葉に詰まれば、佐吉は拳を固く握る。八つ当たりだと頭では理解しても、吐き出さずにはいられなかった。

「何が悪いのかも分からないくせに、表面だけ取り繕って機嫌取りか? はっ、浅ましい思考だな。俺は本質も分からずに媚びを売る奴が、大嫌いだ」

「あたしは、そんなつもりじゃ――」

「二度と俺の前に顔を見せるなと言ったはずだ。消え失せろ!」

 言葉の槍を突き刺されているのは大海だが、佐吉自身も胸が痛む。だが、これだけ言えば、二度と大海は佐吉と顔を合わせないだろう。その方が互いのためになるのだと、痛みをごまかした、その時だった。
 
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