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戦国ラブドール
第19章 愛憎
黄夫人を目指せとは、初めて佐吉と会った時に言われた一言だ。美しさではなく、聡明さで孔明に選ばれた黄夫人。彼女に多少なりとも近いところがあると佐吉が考えているとすれば、それは褒め言葉である。佐吉の言葉は、思い返せばほとんど辛辣だ。しかし胸の内では少しでも評価してくれたのだと思えば、嬉しさが湧き出した。
「兄なら、書庫か近淡海の側にいると思います。あなたの顔を見れば、喜ぶと思いますよ」
佐吉の弟は、兄とはまるで正反対の友好的な笑みを浮かべる。顔立ちは似ているが、全く中身は似ていない兄弟だった。
大海は弟に礼を言うと、近淡海の方へ向かう。しばらく探し回れば、険しい顔で近淡海を眺める佐吉を見つけた。
「佐吉!」
大海が声を掛ければ、佐吉は険しい顔のまま舌打ちする。明らかにまだ怒っている姿を見れば怯みそうになるが、大海は折れずに向き合った。
「佐吉、話がある。少し時間をくれないかい?」
「……俺にお前と話す用はない。消え失せろ」
佐吉は大海と目を合わせず、冷たく言い放つ。だが大海は、構わずに佐吉へ頭を下げた。